2010年06月10日

団塊ジュニアを見送れば日本は再生不能 駒村康平・慶大教授 (産経新聞)

【少子化連続インタビュー】(5・上)

 なかなか止まらない少子化。慶大の駒村康平教授は「団塊ジュニア世代をこのまま40歳になるまで見送れば、日本社会は再生不能になる」と警鐘を鳴らす。

 −−少子化問題についての考え方は

 「そもそも『少子化は問題か』という人がいる。例えば『少子化が進んでも社会保障を変えればいい』といわれるのだが、現実問題としてそれはあり得ない。つまり、世代間の仕送り方式(賦課方式)で医療も介護も年金もやっているわけだから、それをすべて民営化といった形にすることは机上の空論に近い」

 −−机上の空論?

 「仮に社会保障の財源を若い現役時代から積み立てる積立方式に移行したとしても、人口が減少して労働力が減り、貯蓄率が下がる縮小均衡の中、積立金の金利はほとんど付かないだろう。だから、人口が減少し、成長率が低下すれば、民営化しても乗り越えることはできない」

 −−少子化問題は「手遅れ」という人もいる

 「1970年代後半からこれだけ長い間ずっと出生率が2・0を切っているわけだから、人口減少は続くことになる。ただし、年金みたいな制度は100年後まで見通して考えているので、今、子供が生まれれば20年後には労働者になるわけだし、合計特殊出生率が1・3の場合と1・6の場合ではかなり組める制度に差が出てくる。100年というスパンで考えている年金のような制度では手遅れでも何でもない。あきらめるには早すぎる」

 −−現在の出生率をどうみるか

 「これも決して日本人が望んだ姿ではなくて、やはり本当はもっともっと子供を持ちたい人は多い。女性の社会進出との関係をみれば、70年代から80年代前半くらいまでは女性の社会進出と大学進学率は出生率の低下要因になっていたが、多くの先進国では80年代から90年代を境に、仕事と進学と子育ての両立が事実としてできている」

 −−日本の場合は

 「日本では介護保険制度の導入が検討されていたころ、少子化の問題も議論された。あのときにチャンスが1回あって、介護保険を先にやるのか、子供支援政策を先にやるのか、大きな問題があった。私は両方やるべきであったと思うが、バブル崩壊後の日本経済で二兎を追うことが大変難しかった。団塊の世代というボリュームの多い世代にとって介護の方が子供よりも優先された。保育の関係団体にはシステム変更で供給が増大することへの抵抗感もあって、少子化対策が大きく遅れた。そういう意味では大変大きな失われた20年だった」

 −−現状については

 「そういう意味では最後のチャンスが来ている。それは団塊ジュニアが30代半ばまで来てしまったということだ。団塊ジュニアはバブル崩壊後の厳しい労働環境の下で家族を形成しにくい、子供を持ちにくい状況で失われた10年、15年を過ごしてきてしまった。この膨大な世代をこのまま40歳になるまで見送っていると、本当に日本社会は再生不能になる。あまりのんきな議論をやっている状況ではない」

 −−子ども手当など民主党政権の少子化対策には不安も多いが

 「子ども手当は決して間違った政策ではない。団塊ジュニアの世代は非常に経済状況が悪い状態で社会に出ているのだから、社会的な賃金補助という意味で子ども手当は正しいと思う。ただ、問題は所得制限を付けるかどうかだ。技術的な問題もあって所得制限を付けられるかというのもあるが、所得制限以外の方法がある。私は手当が月2万6千円になったら子ども手当を所得税の課税対象にしてもいいと考えている。そうすれば20、30代で子供を持っている世帯でも高所得の世帯には課税され、実質所得制限と同じ効果が出てくる。手当の完成型ではそういう議論もすべきだ」

 −−金額については

 「先進国で手当が所得に占める割合というのはだいたい平均賃金の4%くらいで、金額に直せば2万円くらいだ。子ども手当が2万6千円になると5%を超える。先進国の平均的な子ども手当に比べればやや高い感じはする。ただ、手当がきちんと出ている国、つまりGDPに対して家族給付が充実している国というのは子供の貧困率が低い。そういう意味では、子ども手当の目的には経済困難な世帯への応援もあるから、それは間接的な少子化対策にはなるだろう。直接的な少子化対策としては効果が足りない部分もあるので、当然仕事と子育ての両立支援政策もやらなければならない」

 −−現金と現物のバランスを取らないといけない

 「この辺は財政的な制約もあるわけだから、きちんと国民に説明して、両者のバランスをよくしていく。政策目標が複数ある場合、今の話でいえば経済対策、両立支援、出生率の改善、就学前教育みたいなものがテーマになっているわけだから、一粒で4つもおいしい政策はないわけで、4つの目標があれば4つの最適な政策の組み合わせをしないといけない。そのための安定財源も確保すべきだ」

 −−保育所改革も急がれるが

 「保育サービスへの参入障壁を下げて、民間保育所にどんどん入ってもらい、場合によっては幼稚園にも入ってもらう。しかし、予算制約があれば、それこそ保育所の設置基準を下げてまるで『水で薄めたミルクを出す』しかなくなる。すでに日本の保育所の面積や人員配意基準はパリやストックホルムなどの大都市の保育所と国際比較してもかなり低い方になっているから、水で薄めたミルク、つまりこれ以上質の低い保育サービスを出すわけにはいかない」

 −−水準維持にはどうすべきか

 「今の水準を守りながら、数量の充実をはかるのだから当然安定財源がなければいけない。前政権では、この安定財源の話を横でにらみながら、さまざまな保育団体が今まで50年続いたような保育制度を守り抜きたいと抵抗していたため、議論が足踏みしていた。いよいよ安定財源を確保できるかどうかという議論が始まったときに政権交代になった」

 −−いま何が必要か

 「新しい保育所のシステム自体はもう完成している。システムはあるのだがガソリンがないという状態だ。そこのところに5兆円を超える子ども手当の話が飛び込んできた。このガソリンを全部子ども手当に入れてしまえば相変わらず新しいエンジンには燃料が流れ込んでいかない。やはり財源全部を現金給付に使うのではなくて、足りない部分に入れる。子ども手当のうちの一部を現金か現物か選べるような仕組みにして、それを子供の支援のためのエンジンの中に流し込む。ただ、そこには分権化の問題もあり、自治体が燃料を子供のエンジンに流し込まないで、介護や公共工事などの別のところに流し込む可能性がある」

 −−財源の在り方は

 「まずは今バラバラになっている子供向けの予算を少し整理する。児童手当拠出金や育児休業給付金、母子保健みたいなものも含めてバラバラになっている子供向け予算を一つに集約して、それを新しいシステムに流し込んでいく。場合によっては新しいシステムだけではなくて、地域のさまざまな子育て支援、放課後クラブ、学童保育も含めて流れ込んでいく仕組みにすべきだ」

 −−財源の入れ方にはメリハリも必要だ

 「保育サービス自体は育児休業と両面関係だから、育児休業を多く取ってくれれば保育所をそれほどつくらなくてもよくなる。特に子供がゼロ歳の間に育児休業をたくさん取ってくれれば、その分だけ高コストのゼロ歳児の保育サービスが必要にならなくなる。育児休業をあまり取らせていない企業はフリーライド(ただ乗り)していることになるから、保育サービスのための費用として拠出金の負担を増やしてもらう」

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posted by モガミ マサユキ at 22:30| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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